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管理職・リーダーの当たり前が部下をつぶすメカニズム

日頃、管理職やリーダーの皆さんから、

たくさんの人材育成に関するお悩みを聴きます。

 

例えば、自分の部下に対して、

・なぜ、こんなにも当たり前のことができないのか?
・いつまでたっても、一人でできるようにならない
・いつまでたっても、成果を上げられない
・なぜ、いつも同じミスをするのか?

 

そんな悩みをお聞きします。

 

そして「どうすれば、部下を成長させられますか?良い方法はないですか?」

と相談をいただくわけです。

 

ご相談に対して、色々な指導方法をお伝えします。

 

ところが、新たな指導方法を実践してただいても一向に効果が出ない場合があります。
むしろ、アドバイスをした管理職と部下の関係が悪化していき、
メンタル不調や離職を促すようなことが過去にはありました。

 

部下に対して、先に書いたような悩みを持っている管理職・リーダーの皆さんには、
指導の仕方を見直す前に、自分の思い込みを確認することをおすすめします。

 

自分の「思い込み」とは何なのか?

 

先ほど書いたような悩みを持つ管理職・リーダーの方が、
知らず知らずのうちに持っている思い込みがあります。

 

それは
「自分ができること=誰でもできること」
という思い込みです。

 

管理職・リーダーの悩みの背景に、下記のような思い込みが隠れています。

 

・なぜ、こんなにも当たり前のことをができないのか?
 →思い込み:自分にとってできて当たり前=誰でもできて当たり前

・いつまでたっても、一人でできるようにならない
 →思い込み:自分は一人でできる=誰でも一人でできる

・いつまでたっても、成果を上げられない
 →思い込み:自分は成果を出せる=誰でも成果を出せる

・なぜ、いつも同じミスをするのか?
 →思い込み:自分はミスしない=誰もミスはしない

 

そんな思い込みがあると

「できない部下」が信じられなかったり、許せなかったりします。

 

そして

「なぜ、こんなこともできないのか?

できないのは、あなたの努力が足りないからだ」

と指摘してしまったり、

言葉にしなくても管理職・リーダーの心模様(「あなたを信頼していません。あなたを許しません。」)が部下に伝わり、

関係が悪化していくようなのです。

 

「自分ができること=誰でもできること」
という思い込みを専門用語で「生存者バイアス」などといいます。

 

この「生存者バイアス」について少しだけ説明します。

 

第二次世界大戦中のアメリカ軍内で、敵機に撃ち落されないように、
軍用飛行機の装甲を補強するプロジェクトがあったそうです。

 

実際に戦闘から帰還した飛行機を調べると、大きな損傷を受けている箇所が確認できたため、
指揮官は、損傷個所を中心に補強することを考えていました。

 

しかし、同じプロジェクトに関わっていた統計学者のエイブラハム・ウォルドの研究チームは
「大きな損傷を受けていない箇所を補強すべきだ」と主張します。

 

なぜなら、大きな損傷を受けた箇所があっても、その飛行機は帰還できている。
つまり、その箇所は損傷しても飛行に与える影響が小さい。
一方で、帰還できなかった飛行機は別の箇所に損傷を受けたからこそ、帰還できなかった確率が高い。
そうだとすると、帰還した飛行機が損傷を受けていない箇所こそ、補強をすべきだ。
そんな主張をしたわけです。

 

多くの損傷を受けた箇所を補強すべきだ、と考えた指揮官たちの頭の中からは
「帰還できなかった飛行機」の存在が無視されています。

 

つまり、生き残った飛行機のみを基準として、
補強箇所を決めようとしていたのです。

 

ちょっと長々と書きましたが、
管理職・リーダーの皆さんは、ある意味で
「会社で成果を出してきた“生存者”」と捉えることができるかもしれません。

 

厳しい現場で成果を出し、評価を得られた皆さんの“当たり前”が、
全ての人にとっての“当たり前”とは限らないわけです。

 

人には能力の違いがあります。

得意・不得意もあるでしょう。

 

まずは、部下の能力や状況を、ありのままに確認することが必要です。
そして、相手の能力や状況に合わせて、働きかけを(場合によっては、任せる役割を)
変えていく必要があるのではないでしょうか。

 

本日は以上です。

ありがとうございました。

 

参考
Mangel, Marc; Samaniego, Francisco (June 1984).
“Abraham Wald’s work on aircraft survivability”.
Journal of the American Statistical Association 79 (386): 259–267

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